
3rdschoolという教育事業を運営しております。2年間教育系NPOの活動に従事し、海外の初等教育の現場で「個性教育」の重要性を認識。2017年に帰国し、3rdschoolを立ち上げました。4年ほど勤務する傍ら、海外のオルタナティブ教育の研究を行っています。
子ども向けプログラミング教室「3rdschool」を運営

東京の吉祥寺で、子ども向けプログラミング教室「3rdschool」を運営している山田雄太さん。子どもたちと日々向き合っている山田さんは、「子どもの自立心を促す方法」について、次のように語ります。
「答えをすぐに教えるのではなく、『答えを得るための方法』を教えてあげることが、子どもの自立心を育てます」
あえて答えそのものを教えず、「子どもが自ら考えて動けるように導く」というのが山田さんのスタンスです。
山田さんは大学時代、国際教育NPOでアジアの教育途上国の支援活動をしていました。そのとき、日本を含めたアジアの教育が「暗記」中心であるのに対し、北欧の教育は答えが合っているかどうかではなく、「考え方のプロセス」を重視していることを知りました。
「『すべての人が自分らしく生きられる』という考え方を教えているのを見て、衝撃を受けました」。これからは日本でも、子どもの個性や才能を伸ばす教育が必要になる、と感じた山田さんは、2017年に帰国後、自ら実践しようと「3rdschool」を立ち上げました。
現在も、教育先進国であるイタリア(レッジョ・エミリア教育)やオランダ(イエナプラン教育)の「個性を尊重する『オルタナティブ教育法』」からヒントを得て、個性や才能を伸ばす教育方法を研究しています。
オンラインで子どもの自立心を育み、勉強へのやる気を引き出す
山田さんが提供する「子どもの自宅学習をオンラインで支える」サービスとは、具体的にどのような取り組みなのでしょうか。
「朝夕にそれぞれ20分ほど、Zoomのビデオ通話を利用して、お子さんと顔を合わせます。その日に取り組むことを一緒に考えたり、一日の成果を共有しながらフィードバックしたりするイメージです」
子どもの関心事や不安に寄り添い、自ら学びに向かいたくなるようにすることを目的にしています。そのため、勉強だけではなく、遊びや工作など「その子が頑張ったこと」全般を扱っています。たとえば、これまでに「レゴで作品を作って、それを紙芝居にする」「プログラミングツールでシューティングゲームをつくる」などの取り組みをサポートしてきました。
「普通の家庭教師のように『勉強を教えること』が目的ではありません」と山田さんは強調します。
「私自身の経験から、『教えること』には限界があると考えているため、子どもたちの『学びたい』という思いをサポートすることに徹しています。『その子が学びたいことを自ら学びたいように学んでいく』というのが、この時代に合った学び方だと思います」
将来的には「日本発のオルタナティブ教育を作ること」を目指している山田さん。そのために、既存のスタイルにとらわれない、子どもたちとの新たな関わり方や学びの伝え方のノウハウを蓄積中です。
子どもの心にオンラインで寄り添う「近所のお兄ちゃん」

新型コロナウイルスの影響による休校期間中、各種教育系サービスが子どものために、オンラインコンテンツの無償提供を行いました。しかし、家庭からは「コンテンツだけあっても、子ども一人では対応できない」など、不満の声が多くあがりました。
「子どもの自宅学習を支えるためには、コンテンツ以外に一体何が必要なのか?」。山田さんは考えました。
「子どもに寄り添い、今日は何をやる予定なのかを聞き、やったことに対して『すごいね!』と言ってあげる。そんな家族以外の第三者の存在が必要なのではないか、と気付きました」
そこで、「子どもの学びをサポートし、適切なフィードバックができる」、まるで「近所のお兄さん」のような人がオンライン上に存在していたら、家庭の不安が和らぐのではないかと考え、新しいオンラインサービスを始めたのです。
利用者からは、「休校期間中、子どもが親以外の誰かと話せる環境が大きかったです。どうしても家族との関係が煮詰まる中、第三者が入ることで、その時間が楽しみになったり、息抜きになったりしたようで、普段の生活でも笑顔が増えました」という声が寄せられています。
「一緒にやろう」は子どもの自立を促す魔法の言葉

長引く休校期間中、学校から大量の課題が出されても、子どもが一向に机に向かわない…と悩む家庭も多かったのではないでしょうか。子どもの「やる気」がなければ自宅学習は進みません。山田さんに「子どもをやる気にさせるコツ」を聞きました。
「子どもにやる気を出させる魔法の言葉はずばり『一緒にやろう!』です。僕もやるから君もやってきてね、とタスクを共有すること。つまり、タスクを「共同作業」にしてしまうのです」
「やってきてね」ではなく、「一緒にやろうよ」というのがモチベーションを上げるポイントだと山田さんは語ります。
「子どもに、『君ひとりでやらなくていいんだよ』と伝えることが重要です。先生と生徒のような上下の関係でなく、僕も一緒に学ぶ『同じ立場』にあると表明することで、子どもに安心感が生まれ、結果的にそれがモチベーションアップにつながります」
長期にわたった外出自粛や休校で、親子関係がギクシャクしてしまった家庭もあるかもしれません。子どもへの接し方に悩む人に向け、山田さんはこうアドバイスします。
「大人の想像したように、子どもは動いてくれないので、自分なりの正解を押しつけずに『待ってあげること』が大切だと考えています。
植物を育てるように、支柱を添えてあげて、あとは水と肥料と日光を当ててあげれば、その子が好きなように支柱に巻き付いて育っていくのではないかと思っています」
「勉強しなさい!」「宿題は終わったの?」 子どもの態度についつい口出ししてしまう人は、山田さんに相談してみてはいかがでしょうか。子どもとの接し方を見つめ直すきっかけがつかめるかもしれません。