サンフランシスコに本社を構える外資系企業のプロダクトマネージャー兼UXデザイナーです。これまでに toB/toC、国内/海外、エンタープライズ/スタートアップを問わず 80以上のプロダクトやサービスの改善、新規事業の立ち上げを約10年以上担当してきました。ウェブサービスの UI/UX にお悩みの方のお役に立てれば幸いです!
UXとは? UIとどう違うのか?
「UXとUIの違いは、物事を『点』で捉えるか、『線』で捉えるかです」
そう語るのは、外資系IT企業でプロダクトマネージャー兼UXデザイナーを務める坂田一倫さんです。
「UI(ユーザーインターフェイス)は『点』であり、その点が連続して1つの『線』になり、UX(ユーザーエクスペリエンス)が構築されていくのです」
たとえば、「父の日にプレゼントを贈る」というユーザーの一連の行動から「UXとUIの違い」を説明してみましょう。
(1)父の日にプレゼントを贈りたい【目的】
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(2)ECサイトを開いて父の日プレゼント特集を選択する【UI(ユーザーとサービスの接点)】
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(3)プレゼントを選択する【UI(ユーザーとサービスの接点)】
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(4)購入する【UI(ユーザーとサービスの接点)】
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(5)発送依頼して父に届く【ゴール】
ユーザーが目的を定めてからゴールに至るまでの(1)から(5)までの一連の行動を「UX(ユーザーエクスペリエンス)」といいます。ユーザーエクスペリエンスとは、ユーザーがサービスを通じて得られる「体験」のことです。UXの向上は、ユーザーの満足度を高めることに繋がります。
一方、Webサービスを作る側が、いくら「UI(たとえば(2)Webサイトの充実)」に注力したとしても、ユーザーのゴールを見誤って設計してしまうと、例えば、父の日に特化していることが伝わらないなど、早い段階でユーザーの関心が失われてしまい、(3)までたどり着いてもらえません。
「ユーザーが必要としているサービスの価値をいかに明確に届けるか」。その点にUXの戦略があると坂田さんは考えています。
UXの優れたデザインとはどういうものか?

「優れたUX」について、次のケースから考えてみましょう。
Q. 客が「壁に穴を開けるもの」を探しに店にやってきました。店員は「ネジ」の性能の良さについて懸命に説明しますが、客は一向に買うそぶりを見せません。これはなぜでしょうか?
A. なぜならば、客のゴールは「ネジを買うこと」ではなく、「壁に穴を開けること」だからです。つまり、壁に穴を開けられるものであれば、ネジでなくても良く、ドライバー、電動ドリル、のこぎり…などでも構わないのです。
ゴールを達成するための手段を探しに来店した客に対し、この場合の「優れたUX」とは、一方的に「ネジを勧めること」ではなく、「ゴール達成のための選択肢を与えること」なのです。
「優れたUXとは、ユーザーの『ゴールの達成』に向けて、的確にサポートできるサービスである」。坂田さんはそう考えます。
UXを意識したサービスやプロダクトの設計のポイントとは?

「理想のUXとは、ユーザーがストレスを感じることなく、モノを利用できたり、体験できたりする状態です」
坂田さんが開発に携わったJR東日本のアプリ『GO! by Train』の例を挙げてみましょう。
このアプリは必要な機能が厳選され、シンプルなデザインでユーザーが扱いやすい仕様になっています。運行情報をリアルタイムで配信するサービスも行っているのですが、「電車が何分遅れているか」だけでなく、「なぜ遅れているのか」という遅延の原因も表示しています。「この点が重要である」と坂田さんは力を込めます。
「遅延の原因が人身事故の場合には、さほど時間がかからず通常運行に戻るかもしれません。しかし、車両点検の場合には点検作業に時間がかかり、さらに遅延時間が延長されるかもしれないのです。その情報こそが、ユーザーのゴールである「A地点からB地点まで問題なく移動したい」を達成するための判断材料として必要になるのです」
つまり、遅延の原因を表示することで、「目的地にたどり着く」というゴールの達成に向けて、「次の電車をホームで待つ」のか、「別のルートを使う」のかをユーザーがスムーズに判断できるようになるのです。
このような優れたUXを設計するために重要なポイントについて、坂田さんはこうアドバイスします。
「『こうすればユーザーは喜ぶだろう』という、自分の思い込みでUXを考えるのは非常に危険です。どうすればユーザーのニーズを満たせるのか? 徹底的にユーザーにインタビューすることに尽きます。
また、ユーザーのニーズをつかむために、自分自身がさまざまなユーザー体験を積み、共感力を育むことも重要です」
坂田さんとUXの関わり

いまや「UXのスペシャリスト」として活躍中の坂田さんですが、大学ではインタラクションデザインを研究し、卒業後はユーザーとの接点を担う「UI」を作るデザイナーとして楽天でキャリアをスタートさせました。
キャリアを積んでいくうちに、「ミクロな観点ではなくマクロな観点でモノづくりがしたい」という気持ちが芽生え、関心のレイヤーがサービス全体(UX)に移ってきました。
その後は、BtoB/BtoC、国内/海外、エンタープライズ/スタートアップを問わず、80以上のプロダクトやサービスの改善や、新規事業の立ち上げに10年以上携わり、現在は外資系IT企業のプロダクトマネージャー兼UXデザイナーとして、クライアントのビジネスやプロダクトゴールの達成を支援しています。
「通常のモノ作りでは『考える→作る→評価する』という手順を踏みますが、UXを設計する場合には、『何を成し遂げたいのか?』『そのためには何が必要か?』から逆算して考えてみることをお勧めします」
「UXについて知りたい」と思っている人は、UXに関する知見が深い坂田さんに相談してみてもいいかもしれません。UXを考えるときに何から始めればよいのか、そのヒントが見つかるでしょう。