情報経営イノベーション専門職大学で客員教授を務め、「タイムチケット」で起業や新規事業の相談にマンツーマンで応えている起業家の池森裕毅さんに起業を志すときに読むべき「おすすめの本」を聞きました。
池森さんがおすすめするのは、「史記(本紀)」「起業のエクイティファイナンス」「キン肉マン」の3冊です。
心を鍛えるために読んでほしい「史記」

紀元前1世紀初頭、漢の司馬遷が完成させた歴史書であり、中国の古典中の古典ともいうべき『史記』の全訳。「本紀」は黄帝から秦の始皇帝の全土統一を経て漢の武帝時代にいたる帝王の系譜を描いています。中国史進展の大筋を「五帝」「夏」「殷」など、十二巻で述べています。
「歴史から学ぶ部分は多々あると考えます。
とりわけ史記には多くの格言があり、その大半がマインドセットの部分ゆえに、現代にも応用が効いてくる。起業においてテクニカル的なところはどうとでもカバーができるので、最後は心の部分が重要です。
その大切な心を鍛えるためにも、ぜひ読んでもらいたい本です」
なかでも、池森さんの印象に残っている格言は「隗より始めよ(物事を始めるなら、まずは自分から始めなければ誰もついてこないという意)」。
「大きなビジョンを持つのはとても大切ですが、実際は少しずつコツコツやることがとても重要です。『史記』から得た学びは、浮足立つことなく実直に行う大切さに活きています」
ベースの知識を身に付ける「起業のエクイティファイナンス」
スタートアップファイナンスのバイブルともいえる『起業のファイナンス』の続編。ベンチャーが活況を呈しM&Aも一般的になった現代。起業をめぐるファイナンスも優先株を使うなど複雑になってきた実情に対応し、より専門的なエクイティ・ファイナンスの実務手続きを解説した一冊です。
「スタートアップにとって重要なエクイティファイナンス(株式資本の増加をもたらす資金調達)の基礎が詰まっているので、ベースとなる知識を身につけることができます。
この手の知識は、起業初期に最も必要であるにも関わらず、その時期の起業家の多くが、持ち合わせていないというジレンマがあります。そして、知識不足によって起こる問題は大半がリカバリーできません。
そうなるのを未然に防ぐためにも、ぜひ読んでもらいたい一冊です」
この書籍のなかでも特に重要な部分は?とたずねると「この本に関しては全般です」と池森さん。
「(書籍の)後半になればなるほど難易度が高くなるので、初心者は前半の概要だけでもおさえておきたいところです」
王道のすべてが詰まった「キン肉マン」
週刊少年ジャンプで1979年から1987年まで連載されたプロレス系格闘漫画。超人のキン肉マンが仲間の正義超人とともに、次々と立ちはだかる強敵とリング上で戦いを繰り広げる。戦いによって形成される友情の美しさに主眼を置いた作品で、敵役とも戦いの末に仲間になっていきます。
「友情・努力・勝利。『キン肉マン』には、王道の全てが詰まっています。
結局の所、起業は泥臭いことをコツコツやる地味な世界です。いかに継続して努力できるのかが重要です。そして根性。この「努力」と「根性」の2つに尽きると考えています。
若い人たちもぜひ「火事場のクソ力」を身につけて頑張ってもらいたい」
池森さんは、「キン肉マン」の中でも特に影響を受けた場面として、「ネプチューン・メッセージ」を上げます。
キン肉星王位争奪編で、パーフェクト超人の「ネプチューンマン」が世界中の超人に向けて、こう呼びかけました。
「次世代の超人のために、自分たちが捨て石になってでもフェニックスたち凶悪超人を倒そう」。
池森さんはこのネプチューンマンの精神に「感動した」と話します。
「僕らがいま起業できているのは、前の世代の日本の起業家が頑張ってくれたお陰です。
だから僕らも次の世代に伝えていきたい。そのために自然と体が動いてしまうわけですよ」
知的好奇心こそが源泉。興味の湧いた本から読み始めよう
読書から起業のヒントを得るには、どんな読み方をするのが良いのでしょうか。
池森さんは「好きなものから始めるといい」と話します。
「無理やり読むのではなく、興味がわいた本をそのつど読むのが一番だと思います。好きなものから始めるといいでしょう。
ただ、一つ気になったらとことん深堀りして、満足のいくまで調べるべき。中途半端はいけないと思っています。知的好奇心こそが源泉です」
大学の客員教授として次世代のリーダーを育成する池森裕毅さん

池森裕毅さんは、現在経営する会社を含めて3社の起業を経験した「連続起業家」。「タイムチケット」を活用して起業や新規事業の相談に応えているほか、2020年に開学した「情報経営イノベーション専門職大学」の客員教授として起業のノウハウを教えています。
起業をしたいとき、本を読むことで知識を得たり、自己分析を深めることも重要です。しかし、実際に起業するためには、事業プランを多角的な視点から考察する必要があります。
そんなときは池森さんのような起業の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。自分では気づかなかった「ビジネスの落とし穴」を指摘してくれるかもしれません。