IT関係の仕事として「システムエンジニア」や「プログラマー」はよく耳にしますが、「インフラエンジニア」はあまり耳慣れない言葉かもしれません。ITの基盤を作る縁の下の力持ち、インフラエンジニアとは? 現役のインフラエンジニアで、キャリアデザイナーも務める岡田亜希子さんに、インフラエンジニアの仕事やキャリアパスについて、わかりやすく解説してもらいました。
インフラエンジニアとは?
——「エンジニア」にはさまざまな種類がありますが、中でもインフラエンジニアはどんなことをするのでしょうか。 まず、インフラエンジニアも、システムエンジニアの1つです。そしてインフラエンジニアは、ネットワークエンジニアとサーバーエンジニアに細分化することができます。 1.ネットワークエンジニア 会社でPCを立ち上げると会社のネットワークにつながります。そこから会社のシステムやサーバーを見たり、インターネットに接続したり、メールを送受信したりといったことができます。こうしたネットワークを構築するのがネットワークエンジニアです。 2.サーバーエンジニア 勤怠の管理システムやメールサーバーといったサーバーを作ったり、管理したりするのがサーバーエンジニアです。サーバーエンジニアは、システムが動いている環境によってオンプレミス型のサーバーエンジニア、クラウド型のサーバーエンジニアに分かれています オンプレミス型というのは、自社の社内でネットワークやサーバーを設置・運用することをいいます。一方のクラウド型では、クラウド環境にサーバーやネットワークを作ります。マイクロソフトのAzureやAmazonのAWS、国内だとNTTデータの金融向けサービスであるOpenCanvasがクラウド環境の一例です。 ——岡田さんご自身は、どんなお仕事をされているのでしょうか。 私はインフラエンジニアとして、クラウド環境でのシステムやネットワークの導入コンサルティングから、設計・構築などに携わっています。お客さまのビジネス課題を洗い出し、それを解決する手法を提案しています。
インフラエンジニアの主な仕事内容

——インフラエンジニアの仕事内容を詳しく教えてください。 インフラエンジニアには、システムの導入コンサルティングや設計・構築をする人たちと、導入したシステムや基盤を保守する人たちがいます。詳しくは、次のとおりです。 ・設計 お客さまのビジネス上の課題を洗い出し、システムでどう解決できるかを提案し、設計していきます。 ・構築 設計に基づいてシステムを構築し、構築したシステムをテストして、お客さまに環境の説明を行います。 ・運用 システムが導入されたあと、システムを監視したり、エラーが出た場合には調査、修復・復旧対応をしたりします。
インフラエンジニアのキャリアパス

——インフラエンジニアになりたいと思ったら、どういうキャリアパスを歩んでいくのがよいのでしょうか。 まずは企業が出している求人に応募して、経験を積んでいくのがよいでしょう。 ある程度年齢がいくと、未経験での採用は難しくなります。ただし、若年層を含めた未経験者向けの全体の求人数は、転職エージェントを活用した方が直接応募だけよりも広がると思います。
実は転職エージェントには、ネットワークの運用監視といった未経験でもできる案件がたくさんあります。運用監視の仕事は常に人が足りていません。なぜかというと「仕事内容が単調」「給与が低い」といった理由から、1、2年で辞めてしまう人が多いのです。
未経験からインフラエンジニアになりたいという人は、そうしたところを踏み台にして次へいくのも1つの手段です。ただし、一度エスカレーターに乗れば次のエスカレーターに簡単に乗り換えられるということはありませんので、キャリアアップのために努力し続けましょう。
一度入社して熱心に仕事をしていれば、リファラル採用やスカウトなどの道が開けます。経験を積んだあと外資系企業に転職したければ、LinkedInなどを活用するのもよいですね。
インフラエンジニアになるために必要な知識とは?

■「基本情報技術者試験」で体系的な知識を身につけて
——インフラエンジニアになるために身につけておくとよいスキルや知識はありますか?
情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験「基本情報技術者試験」に出題されるような知識は必ず身につけておいたほうがいいですね。基本情報技術者試験をパスしていないインフラエンジニアは、実はとても多いのです。資格を持っていなくてもエンジニアになれますが、基本となる知識がないと技術的な部分で行き詰まってしまい、キャリアアップができません。
基本情報技術者試験はインフラエンジニアに必要な知識が体系的に学べます。試験内容の更新スピードが速くないために、この試験で基礎知識を学んだうえでさらに新しいことを勉強していかなければなりませんが、企業に入社したあとの共通言語を獲得すると思って取り組んでほしいと思います。
■インフラエンジニアに向いているのは「息を吸うように勉強できる人」
——インフラエンジニアにはどんな人が向いていると思いますか?
インフラエンジニアの世界は、技術の変化のスピードがとても速いです。特にクラウド型のサーバーエンジニアは、年間300件ぐらいのアップデートに対応しなければなりません。そのため、息を吸うように勉強を続けられる人が向いていると思います。
私も今年に入ってクラウド関連の資格を4つ取得しました。現在は5つ目を勉強しています。クラウドの技術を問う試験は有効期限が限られています。今勉強している資格試験は今年の春に改訂されたばかりですが、有効期限が2年しかありません。ですから、息を吸うように、趣味のように知識をアップデートしていくことができなければ、苦しくなっていくと思います。
——先ほどインフラエンジニアの仕事内容で挙げていただいた各フェーズにも、向き不向きはあると思いますか?
そうですね。「設計」はお客さまと対峙することが多いので、人とのやりとりが苦にならない人だとよいですね。コミュニケーション能力がないと思う人は、その時どきに応じて必要な対話力を身につけていけばいいと思います。ただ、人とかかわらずに黙々と仕事をしたいという人にはあまり向いていないかもしれませんね。
「構築」のフェーズでは、お客さまの本番環境を触る必要があります。たった一度のトラブルでお客さまの何億円もの資産を消失させてしまう可能性があるのが構築・運用なのです。そのため、注意力がない人、日頃から忘れっぽい人には向いていないといえるでしょう。
また、「運用」は24時間365日のシフト勤務であることが多いので、体力がある人に向いていると思います。シフト勤務は歳を取ると大変になってきますので、早めにマネジメント職に就いて日勤ができるように努力したいですね。
インフラエンジニアの将来性
——インフラエンジニアの仕事は将来性がありそうですね。 そうですね。特にいま、クラウド型のサーバーエンジニアが少ないので、需要も大きいと思います。とはいえ、今後オンプレミス型がなくなるわけではありません。場合によってはオンプレのほうがコストが安い場合もあるので、クラウドからオンプレに戻る企業も出てくると思われます。
新型コロナウイルスの影響でインフラエンジニアとしての業績が悪化したということもありませんし、将来性は高いといえます。
——これからインフラエンジニアを目指そうという人にアドバイスをお願いします。 勉強することがたくさんあって大変ですが、インフラエンジニアは社会貢献度の高い仕事です。自分たちが構築したシステムのうえで災害情報が管理されていたり、救急車を呼ぶシステムが動いていたり。金融ですと、銀行のATMのバックエンドを担っていたりします。 自分のライフスタイルに合わせて働き方やキャリアを選べる点も魅力ですね。今は女性エンジニアは少ないのですが、柔軟な働き方を選択していけるという点で、女性にもおすすめの職業です。
関連記事を見る
岡田亜希子さんのプロフィールを見る
インフラエンジニアになりたい!岡田亜希子さんにキャリア相談をする